当社は大型リチウムイオン電池メーカーとして、いち早くフルオートメーションの生産体制を実現しました。2012年に建設したフルオートメーション工場について、取締役専務執行役員 兼 CTOの佐藤尋史が、ご紹介します。
リチウムイオン電池は非常に繊細なので、製造時の作業のムラが性能に大きな影響を与えてしまいます。当社のフルオートメーション工場は、装置を操作するオペレーターを除き人手の介在はありません。作業のムラやバラつき、異物の混入(コンタミネーション)を防ぎ、常に一定の高い品質を維持することが可能です。
人体から出るわずかな汗さえも電池作りにおいては大敵のため、ドライルーム内に配置するオペレーターは必要最低限の人員で、空調設備も従来の設備と比較すると少なく、また人手による作業がないため材料の粉末などが飛散せず、工場内は極めて清潔に保たれています。
この工場を建設するにあたって参考にしたのは製薬工場です。薬は人体に直接取り込むものですから、品質には細心の注意を払って製造されます。そのために工場の生産ラインは全自動化されていて、人手の介在が一切ありません。不安定な要素を排除することで、高い品質を保持しています。
エリーパワーの電池の製造工程において特徴的なのは「混練」工程です。一般的な混練では、電池の材料となる粉末と液体を大きな窯で長時間混ぜます。大きな窯は一度に大量の材料を練り混ぜることが可能ですが、その反面均一に混ぜるには時間を必要とし、メンテンナンスにも多くの人手を要するといったデメリットもあります。
電池の性能は材料の比率でほぼ決まるので、「混練」は非常に重要なプロセスです。詳しい内容は企業秘密なのですが、当社は大きな窯を使わず、コンパクトで周囲環境に影響されない生産環境を実現し、材料を短時間で均一に混練し常に一定の品質を保持することができる設備を実現しました。
もうひとつ、当社の工場は独自の生産技術を採用しています。それが特許を取得した、「つづら折り」方式の製造装置です。当社の電池はシート状の電極を何枚も層のように重ねていく「積層式」と呼ばれる製法を採用していますが、電極を巻き取って製造する「巻回式」に比べ時間がかかるというデメリットがあります。そこで、電極を1枚のつづら折り状に重ねていくことで、従来よりも生産性を大きく高めることに成功しました。
このつづら折りの方法は、吉田社長(現会長)が社内で生産性を向上させるアイデアを募った際に考案したものです。ありがたいことにそのアイデアが評価されて社長賞を受賞することができました。しかし、実際にアイデアを形にするまでの過程ではいろいろな苦労がありました。当時は大型のリチウムイオン電池は製品化されていなかったので、どこも参考にすることはできません。何度も試行錯誤を重ね、4年の歳月を要して生産性を数倍に向上させることができ実用化にこぎつけました。
エリーパワーは2006年に設立されたベンチャー企業ですが、すでに250名を超える従業員がいます。その大半は異業種からの転身です。設立当初は電池作りのノウハウもほとんどありませんでしたが、皆でアイデアを出し合い試行錯誤する中で、世界で初めて大型リチウムイオン電池の量産化に成功しました。
わからないことやおかしいと感じたことがあれば、すぐに共有する。たとえ個人では解決できない問題もチームで協力して解決をしてきました。異業種から集まったメンバーが多かったからこそ、前例に囚われない画期的な電池を開発できたのだと思います。