エリーパワーの創業者にして、現CEO兼会長の吉田が蓄電の可能性に気づいたのは、今から約20年ほど昔に遡る。「当時、銀行員だった僕にとって“人と違うことをやる”というのは、ものすごくリスクがあってチャレンジングなことでした。ある日、アメリカ系の金融機関のトップをやっている後輩に会いに行って、いろいろな話をしていたんですよ。そしたら彼から『今から慶応大学の教授が来て電気自動車に乗ってくるんですけど、吉田さんも乗ってみませんか?』と誘われまして」。
思いがけない後輩からの誘いだった。しかし、吉田は一度はこの誘いを断って帰路に着こうとする。「当時は電気自動車=遊園地にあるゴーカートみたいなものと考えていて、興味がなかったんです。けれども、帰りのエレベーターのドアが閉まりそうになったときに、ふとインスピレーションが湧いてやっぱり乗ろうと思って引き返したんです」。
初めて電気自動車に乗ったときの感想について、吉田は目を輝かせながら語る。「電気自動車は乗った途端にワーッと100キロくらいスピードが出て、本当に加速がすごい。スムーズで音がしないんです。なにより、あっという間に100キロも出たというのが驚きでしたね。電気ってこんなにすごいんだ、こんな自動車が現実にあるのかと」。
その日以来、電気自動車に魅せられた吉田は、未来に普及する可能性を感じて独学で電気自動車について調べるようになる。「当時は原発がどんどん増設されることで夜間電力が余ってくるだろうと言われていたんです。その電力を自動車に貯めて昼間に走れるようにすれば、ガソリンを燃やしてCO2を出すよりも環境に良い。しばらくはそのことばかりに夢中になって、これはひょっとしたら世界を変えることになるかもしれないと考えるようになったんです。それが、最初の電気自動車との出会いでした」。